健幸のたね
第7回「年齢とともに味付けが濃くなる?」
「年をとると味付けが濃くなる」という話を耳にされたことがありますか?
これは本当なのでしょうか。今回は「高齢期の味付け」に注目します。
《年齢とともに味付けが濃くなる?》
国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)では「味付けの濃さ」の指標として食事に含まれる「食塩」摂取量が、加齢とともに変化するのかを調べました。
その結果、男性ではほとんどの年代で加齢とともに食塩摂取量は低下していました。しかし、年を重ねると、食べる量そのもの(摂食量、エネルギー摂 取量)も低下しますので、食べる量を考慮した食塩摂取量(エネルギー調整後の食塩摂取量)を調べますと、男性では60歳代で低下傾向を示し(図1:青の実線)、一方女性では、50歳代で増加傾向を示しました(図1:赤の点線)
これまで、味付けは歳をとると濃くなるのではないかと言われてきましたが、NILS-LSA調査研究では、女性の50歳代では食べる量を考慮しても食塩摂取量は増え、一方、男性の60歳代ではむしろ低下していることが示されました。
なぜこの年代の女性でのみ増加したのか、研究では因果関係までは明らかにすることはできません。しかし、減塩指導は特に50歳代女性に対してはより積極的に進めてもよいのではないか、ということを示唆する研究成果の一つといえます。
【夜中の頻尿は塩分も原因?】
一方、「塩分をとり過ぎることが夜間頻尿の独立した危険因子」であるという研究結果を2015年の日本排尿機能学会で、長崎大学の松尾朋博先生が発表しています(図2)。
塩分のとり過ぎが過除な水分摂取につながり、それが頻尿を招いた可能性と共に、高塩分の食事摂取そのものが交感神経バランスの乱れを介して頻尿を起すメカニズムが推察されています。
塩分をとり過ぎる生活は、さまざまなメカニズムで健康を蝕みます。夜のトイレが悩みのタネなら、明日から減塩に取り組むことが、意外な解決策になるかもしれません。
味付けが濃くならないように注意し、素材そのものの味を楽しみ、減塩を心がけましょう。